女化小麦のはなし

現在の日本の小麦の自給率は約13%。パン用小麦に関しては1%(2013年)です。
なぜそれほど作られていないのか?理由は単純で、作っても農家が食べていけないからです。
小麦は広いところで大規模で作れば作るほど低コストでできます。国土が狭く、斜面が多い日本では、外国産との価格競争には勝てません。昔はどこの農家でも小麦を作っていましたが、外国から安い小麦が大量に入って来るようになると、小麦農家を成り立たせるには国が多額の補助金を出さなければならなくなりました。そこで今から50年前の1960年代に、政策として小麦は外国にまかせて日本の農家は野菜に切り替えてお金を稼ごうということになりました。その結果、小麦の生産量はあっという間に減り、野菜の産地が増えました。そこから50年たった今でも状態は変わっていません。ちなみに補助金なしで外国産小麦と同じ値段で小麦を売ると、種と肥料を買ったら赤字になります。

小麦について1

実は、小麦の栽培をやめた時期と農業からの環境汚染が問題になりはじめた時期がちょうど重なります。
農業からの環境汚染というのは、畑で作物を育てるときにあげた肥料のうち作物が吸わずに残ったものが、降った雨と一緒に地下に流れ出して地下水を汚染するというものです。
小麦を作っていた時代の農家の畑の使い方は、春から秋に野菜を作り、冬には小麦を作るというものでした。これを肥料の面からみると、野菜作りの時にあげた肥料のうち畑に残ったものが、冬の小麦が育つために使われました。そして小麦を刈り取った後の麦わらが畑に還ることでもう一度次の年にも無駄なく再利用することができました。このサイクルから小麦が抜けた結果、野菜づくりで残った肥料は全部地下水に落ちていくことになりました。


小麦について2

同時に、害虫や病気も増えました。
野菜だけを作り続けるとその野菜を好む害虫や病気がたくさん集まってきます。それらから野菜を守るために農薬がたくさん使われるようになりました。
野菜と小麦を順番に作ると野菜を好む虫や病気は小麦には付かないため、小麦を育てている最中に畑からいなくなります。だから、次につくる野菜にはあまり農薬を使わなくてもいい野菜ができたのです。私はこの昔ながらの畑の使い方が農業のあるべき姿だと思いました。ともかくそれを実践したいと思い、小麦の栽培を始めました。

小麦について3

知ってますか?小麦って美味しいんです


小麦について2

小麦づくりが衰退した大きな理由は販売・流通です。
まず、流通している小麦粉の多くが外国産のため、国産の小麦を積極的に買い取る業者はいまだに少ないです。ですが近所のパン屋さんに聞くと、地元でとれた小麦だったら小麦粉になっていればぜひ使いたいと言います。
そこで製粉を製粉会社に依頼することを考えましたが、今の製粉会社というのは外国から大量に輸入した小麦を1度に大量に製粉する仕組みになっているため、小規模の農家が栽培したような分量の小麦では製粉することができませんでした。しかし、とりあえず試験用の小さな製粉機で粉にして使ってみようと思い、パンを焼いて食べたとき、大変な驚きがありました。


『これ、おいしい…!』

小麦について3

みなさんは小麦の味を知っているでしょうか?本当の香りを嗅いだことがあるでしょうか?
実は小麦は製粉して粉になった時から徐々に酸化していって、味も香りも落ちていきます。小麦粉自体は半年たっても1年たっても腐るものではありません。虫が湧いたとしてもその虫を取り除けば使えます。ですが、本来の味と香りは1か月程度しかもちません。通常市販されている小麦粉は製粉してから長い時間が経過しているので、意識できるほどに小麦の風味を感じることはできません。小麦粉というのは挽きたてであることで本来の小麦の味がわかるものなのです。

小麦について3

そこで私たちは、新鮮な小麦粉にしかない本当の小麦の味と香りがつたわるように、注文いただいてから石臼で製粉して常に挽きたての小麦粉をお届けするという形を作りました。
環境に良い農業と価値ある食材の提供の2つを両立させていくことを目指しております。